
「この食品にはどんな栄養素が含まれているんだろう」と、栄養素単位で意識していくことの積み重ねが大切だと考えています。
栄養素には、体内で合成できるものとできないものがあるのをご存じでしょうか?
体内で合成できない栄養素は「必須栄養素」と呼ばれ、食事から摂取しないと不足するようになり、様々なトラブルや症状が現れてしまう場合もあります。
それでは、必須栄養素の種類や働き、それぞれが含まれている食品などについて管理栄養士が詳しく解説していきます。
目次
食べ物から摂らないと不足してしまう「必須栄養素」とは?

必須栄養素は次の通りです。
- 必須脂肪酸3種類+2種類
- 必須アミノ酸9種類
- 必須ビタミン13種類
- 必須ミネラル16種類
それでは、それぞれの必須栄養素について詳しく見ていきましょう。
必須脂肪酸の種類と働き
必須脂肪酸は、アラキドン酸、リノール酸、α-リノレン酸の3種類からなります。
広義では体内で合成できない必須脂肪酸とされているので、必須脂肪酸は実質5種類となります。
アラキドン酸
アラキドン酸(ARA)は、乳児の脳や体の発達には必要不可欠な成分です。免疫機能を調整する効果や、学習力や記憶力を向上する効果があります。
また、高血圧の予防、コレステロールの低減にも効果的です。
食品では主にレバーや卵などに含まれています。
不足すると免疫力の低下や肝機能の低下などが起こります。
リノール酸

抗酸化作用も保つため、過酸化脂質の生成を抑え、動脈硬化の予防にも期待されています。
食品では主に牛乳やチーズなどの乳製品に多く含まれます。
不足すると、コレステロールが増えたり、アトピーの発症にも関連しているようです。
α-リノレン酸
α-リノレン酸は、最近話題の亜麻仁油やエゴマ油に含まれているオメガ3脂肪酸です。コレステロールを低下させたり、アレルギーを抑制する効果があります。
一部は体内でDHAやEPAに変換されます。
食事からとる場合は、加熱に弱いので、サラダにドレッシングとしてかけて食べるのがオススメ。
不足すると血栓ができやすくなったり、脳や神経の働きにも影響していきます。
DHA・EPA
DHAやEPAは、α-リノレン酸を原料に体内で生成されますが、食品からも摂ったほうが良いとされている油です。
その他にも、アレルギーを予防したり、認知症の予防・改善にも効果的です。
食事からとる場合は、一度にまとめて摂るよりも、毎日1gほどの量をコツコツと摂る方が効果的とされています。
不足すると、コレステロールを増加させたり、皮膚炎が発生しやすくなり、認知症やうつ病の発症とも関係しています。
DHAやEPAは、調理中に損失されやすいので、油を落とさず食べられる刺身や、煮魚などがオススメです。
魚を毎日食べるのは、コストや手間がかかることを考えると大変なので、手軽なサプリメントを利用するという方法もあります。
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こんな生活をしている方は必須脂肪酸不足の可能性あり!
魚よりも肉を食べることが多い

魚よりも肉が多いという人は注意が必要です。
動物性の脂質には、コレステロールや中性脂肪を増やす原因となる飽和脂肪酸 が多く、これは避けてほしい油です。
▶ もっと詳しく:飽和脂肪酸とは~不飽和脂肪酸との違いや、コレステロールとの関係、注意点について解説します。
ファーストフード・コンビニのものをよく食べる
ファーストフードやコンビニなどは、「トランス脂肪酸」という油を使用している可能性が高く、安全性が疑問視されています。フライなどの揚げ物や、菓子パン、ドーナツなどに使われています。
上記のような油は、よくない油です。
油に対する「体に良くない」というイメージは、上の二つに対して抱かれているのであれば、正解です。
しかし、体を健康に保つために、意識して摂らなければならない油もあります。
▶ もっと詳しく:体にいい油と悪い油がある?脂質や脂肪酸など油の基礎知識を知って効率よく摂ろう!
それが魚に多く含まれる、DHAやEPAなどの必須脂肪酸 です。
これは不飽和脂肪酸と呼ばれ、体に良い効果をもたらしてくれますし、不足すると健康を損ねてしまいますので、必須脂肪酸とされています。
必須脂肪酸のまとめ
DHAやEPAを含め、必須脂肪酸が不足すると、皮膚の炎症や弾力性の低下、脱毛、脂質異常症、動脈硬化など、さまざまなリスクが高まります。良い油・悪い油とはどういうものかということを知り、油だからといって、一口に避けてしまわずに、油の質を考慮しながら選んでいけるように心がけましょう。
必須アミノ酸は、色々な食品からバランス良くとり入れましょう
アミノ酸はたんぱく質を構成しているもので、全て合わせると20種類ありますが、そのうちの9種類が必須アミノ酸です。必須アミノ酸9種類
必須アミノ酸は、次の9つからなります。イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン(スレオニン)、トリプトファン、バリン、ヒスチジン |
必須アミノ酸は、通常の食事をしていれば不足することはないとされています。
しかし、それぞれの食品に含まれているアミノ酸の種類や量は違うので、同じ食品ばかりを偏って食べず、幅広く色々な食品を摂ることが、必須アミノ酸をまんべんなく摂れる、健康への近道といえます。
必須ビタミン・ミネラルは名脇役の栄養素
必須ビタミン(13種類)

ビタミンはそれぞれ働きが違い、水溶性(水に溶ける)と脂溶性(脂にしか溶けない)に分けられます。
水溶性ビタミン 9種類
水溶性ビタミンの必須ビタミンには、次のものがあります。ビタミンB群(ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン)、ビタミンC |
免疫力を高めたり、肌や粘膜を健康に保つ働きをしており、不足すると風邪を引きやすくなったり、肌荒れが起こりやすくなります。
脂溶性ビタミン 4種類
脂溶性ビタミンの必須ビタミンには、次のものがありますビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK |
また、ビタミンDは、ビタミンの中でも唯一体内で合成できるビタミンですが、それだけでは必要な量を満たすことはできないので、食事から摂ることも大切だとされています。
ビタミンDは骨の合成に関わっており、ビタミンAやEは抗酸化作用を持ちます。
ビタミンKは止血のビタミンとも呼ばれ、それぞれ働きは違います。

必須ミネラル(16種類)
ミネラルは、無機質とも呼ばれ、100種類以上存在するとされていますが、人が生きていくために必要な必須ミネラルは16種類で、主要ミネラル7種類と、微量ミネラル9種類に分けられます。必須ミネラルには次のものがあります。
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不足すると、成長や代謝、消化吸収がうまく行われないなどの影響が出てきます。
必須栄養素のまとめ

動脈硬化の予防は、脳血管疾患や、心疾患など、命に関わる重大な病気を防ぐことにも繋がります。
必須脂肪酸が不足してしまうことで、免疫力の低下や肝機能の低下、血栓ができやすくなる、コレステロールや中性脂肪が上がる、肌荒れなどのトラブルも見られるようになります。
体に良い油を摂るためには、調理中の損失も考慮しなくてはなりません。
効果的に摂取するためには、サプリメントを利用するという方法もあるので、「魚を食べなくちゃ」と頑張りすぎないようにしましょう。
油は全て悪いものだと思い込み、摂るのを控える必要はありません。
体に良い油、悪い油を見極める力を身につけ、量に気をつけながら、良い油をとり入れていきましょう。
また、必須アミノ酸や必須ビタミン、必須ミネラルは、私たちが健康に生きていくためには、どれもなくてはならない、大切な栄養素です。
普段の食事の中で、不足しないように、色々な食材をバランスよくとることを心がけていきましょう。
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